150人が本棚に入れています
本棚に追加
/125ページ
海斗と蓮は、蓮の家の広々としたリビングのソファに並んで座っている。
弾力があってゆったりと座れるこのソファは、何事もなければ随分寛げたであろう。
目の前には蓮の母親が腕を組んで座っていて、その顔は少し青ざめている。
海斗は、初対面の蓮の母親に対する居心地の悪さと、隠していた関係がばれた事による後ろめたさを感じていた。
「あなた達、部屋であの様にふざけるのは、良くないと思います。今後は謹んでいただかないと。」
視線は、斜め横を向いていて、二人に視線を合わせようとはしない。
どうしたものか、困惑した様子がその態度に現れている。
蓮は、そんな母親を正視しながらきっぱりと言う。
「ふざけてなどいませんし、今後もやめる気はありません。僕たちは本気です。」
「蓮、あなた何を言っているの?そんな事が許されるはずがないでしょう!」
蓮の母親は、彼を睨んで怒鳴りつけた。
だが、蓮は怯む様子など見せない。
「何を言うかと思えば。今まで、息子に手料理ひとつ食べさせたことがないくせに、今更、親の顔で説教なんて辞めてください。
これは僕の恋愛で、僕の事情です。恋をするのに誰の許しがいるんです?
そんな事までお母さんに干渉されたくありません。」
海斗は、ずっと蓮を見ていた。
それは、海斗の知らない蓮の顔だった。
タメ口じゃない蓮なんて、見たことない・・・。
先生にも、先輩にも、目上の吉川さんにも滅多に敬語を使わなかった。
時に敬語を使わないのはどうかと思ったけれど、でも今は逆に尊敬というより隔たりを感じる。
“どれだけ、寂しい思いをしたんだろうな。”
海斗は胸が苦しくなった。
「そんな事、大人になってから言いなさい!それに、蓮、あなたはこの家を継ぐ唯一の息子なのよ。
あなたが継がなくて・・・誰が・・・誰が次の後継者を残すの?」
それを聞いた蓮は冷めた目で言った。
最初のコメントを投稿しよう!