回想  夏の記憶 Ⅲ

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「それは、女のプライドですか?」 パチンッ 母親は蓮の頬を叩いていた。 「違うわ!」 彼女は怒りで震えていた。 「男が男をなんて、考えただけでも・・・あぁ・・。 雪宮君、悪いけどあなたは、これ以上蓮に付近づかないで頂けますか。」 そう言う母親の声は、ものすごく嫌悪感を含んでいて、海斗は何も言い返すことが出来なかった。  最悪の帰り道だった。 頭の中が真っ白で、どう帰ったか覚えていない。 空を見上げると、青い空が灰色に見えた。 「・・・」 心が曇ると空まで曇って見えるんだな。 これから、僕等はどうなってしまうのだろうか・・・。 蓮の母親の言葉が頭から離れない。 『誰が次の後継者を残すの?』ってつまり、子供の事だよな。 それは、自分の家でも同じ事だ。 確かにそうだ。男同士じゃ子供は産めない。 でも、そんな事を言われたら、俺たちではどうしようもないじゃないか。 ・・・、俺は間違っているのか? この“愛”は、あってはならないものなのだろうか? 家に帰ると、どうやら蓮の家から連絡が入ったようで、海斗の母親も帰ってきていた。 「海斗。」 心配そうな顔を見ると、熱いものが込み上げてきた。 かあさんも、俺に“孫”を期待した? 「かあさん・・・ごめん・・・。」 体を小さく震わせて、耐えるように泣いた。 “一生懸命育ててくれた両親に対して、俺は、親不孝をしてしまったかも知れない” と自分を責めた。
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