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「それは、女のプライドですか?」
パチンッ
母親は蓮の頬を叩いていた。
「違うわ!」
彼女は怒りで震えていた。
「男が男をなんて、考えただけでも・・・あぁ・・。
雪宮君、悪いけどあなたは、これ以上蓮に付近づかないで頂けますか。」
そう言う母親の声は、ものすごく嫌悪感を含んでいて、海斗は何も言い返すことが出来なかった。
最悪の帰り道だった。
頭の中が真っ白で、どう帰ったか覚えていない。
空を見上げると、青い空が灰色に見えた。
「・・・」
心が曇ると空まで曇って見えるんだな。
これから、僕等はどうなってしまうのだろうか・・・。
蓮の母親の言葉が頭から離れない。
『誰が次の後継者を残すの?』ってつまり、子供の事だよな。
それは、自分の家でも同じ事だ。
確かにそうだ。男同士じゃ子供は産めない。
でも、そんな事を言われたら、俺たちではどうしようもないじゃないか。
・・・、俺は間違っているのか?
この“愛”は、あってはならないものなのだろうか?
家に帰ると、どうやら蓮の家から連絡が入ったようで、海斗の母親も帰ってきていた。
「海斗。」
心配そうな顔を見ると、熱いものが込み上げてきた。
かあさんも、俺に“孫”を期待した?
「かあさん・・・ごめん・・・。」
体を小さく震わせて、耐えるように泣いた。
“一生懸命育ててくれた両親に対して、俺は、親不孝をしてしまったかも知れない”
と自分を責めた。
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