回想  夏の記憶 Ⅲ

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「そうではなく、何故海外へ行かねばならないのです?」 父親は、ふっと笑い言った。 「そのうち、分かる。」 むっとした蓮の顔を見て、父親は付け足して言った。 「お前が25歳までに、何とか一人前になればお前の恋愛には、一切口出しはしない。 それに、今あるもの、すべてもお前に譲る事にしよう。」 ー!!!!ー 「な・・・なんで・・・」 「簡単な事だ。経営者という職業は、世襲制だけで乗り越えられるほど、この世は甘くないという事だ。 だが、逆に才能があって、その才が開花すれば自ずと道も開かれる。 冬の寒さに耐えた花ほど美しいのは、桜を見れば充分だろう?」 俺は、ビジネスの話をしに来たんじゃない。 「じゃぁ・・・海斗との事は、認めてくれるんですか?」 「それは、お前が25歳にならないと、どうにも。今は返事は出来ないな。」 「・・・」 上手く逃げられた感がある。 「なに。25歳までに一人前になれば問題ないさ。まぁ、簡単じゃないがな。」 「はぁぁぁぁ。」 蓮は、大きな溜息をついて、ソファにうずくまった。 さて、どうしたものか・・・ 海斗は・・・海斗ならどうするんだろう・・・。 蓮は、無性に海斗に会いたかった。
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