回想  夏の記憶 Ⅲ

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 海斗は、あれから母親と上手くコミュニケーションが取れずに悩んでいた。 母親は蓮の話題に触れようとしない。聞くのを恐れているのか。 もしかすると、海斗の方から話を切り出すのを待っているのかも知れない。 よそよそしく振る舞う海斗は、自身の心を自ら重くしてしまう。 やはり今日も母親には、おはようと行ってきます以外、何も言わず朝練へ向かった。 「なぁ、海斗、ちょっといいか?」 朝練の休憩で、海斗は北山に呼び出された。 校庭の水道で、辺りに誰もいないことを確かめると北山は口を開いた。 「蓮の事、なんか聞いているか?」 「いや。何も。」 「うーむ。・・・お前ら、また喧嘩した?」 「してないよ。」 喧嘩ならまだ、かわいい。 問題は、それ以上だ。 「そっか。だよな。今回は蓮が暫く休むと親から連絡があったらしいな。喧嘩なら自分で俺に言うだろうし、何で来ないのか詳しい事がわかんねぇんだよなぁ。 携帯も繋がらねぇしなぁ、海斗なら、なんか知ってんじゃねぇかと思ったんだが・・・。」 北山は、考え込むように手を顎においている。 「俺も、何度もかけたけど繋がらなかった。」 蓮は今、何をしているんだろう・・・。 無茶苦茶してなきゃいいけどな。 「なぁ。」 北山が、少し迷った顔をして海斗の方を見ていた。 「ん?」 「今回の事、お前らの、その・・・」 北山は言いにくそうにしている。 「なんだよ?」 「あぁ~、もう!ずばっと言うぜ?お前らが部室でしてたキスと何か関係があんのか?」 「!!!」 言い切った!とばかりの顔をする北山に、海斗は顔を真っ赤にして驚いていた。 「き・・北山・・・」 何で知ってるんだ?見られた? 海斗に動揺が走る。 どこまで知られてるんだ?もしかして皆知ってんのか? 「あぁ~、勘違いすんな!別に責めてる訳じゃねぇし。まぁ、そのなんだ・・・あれだ?」 真っ赤になって俯いてしまう海斗に、北山はふぅと大きなため息をついて、優しい声で言った。 「心配すんな。言いふらしてねぇし、知ってるのは俺だけだ。 お前らが例えそんな関係でも俺らの友情は、なぁ~んも変わんねぇよ。」 「北山・・・」
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