回想  夏の記憶 Ⅲ

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「北やん、そろそろ再開するぞ~」 東が体育館の扉から顔を出してこちらに手を振った。 北山は、今行くと東に答えた後、海斗にだけ聞こえるような小さな声で言う。 「今はちょっと、まずいな。」 「そうだな。なら部活の後、駅前にあるコーヒーショップで。」 「あぁ、分かった。じゃぁ、取りあえず戻るか。」 北山は、海斗の背中をポンと押した。 “元気出せ” 言葉こそなかったが、海斗にはそう思えた。  駅前のコーヒーショップは1階のカウンターやテーブル席はいっぱいだったが、2階はがら空きだった。 海斗は、アイスティー、北山はアイスカフェモカを注文すると2階に上がり、隅のテーブル席に座った。 隣の椅子に部活用のバックを置くと、早速北山が訊いてきた。 「お前ら、いつから付き合ってたんだ?」 「実は、お前に見られた日からだんだ。」 あの日以外、部室ではキスはしていない。 「あの日、お互いの気持ちを確かめ合ったんだ。そして・・・キス・・・した。」 なんか物凄く恥ずかしい告白だ。 海斗は顔が真っ赤になった。 だが、意外に北山は冷静にそっかと頷いただけだった。 「蓮の来れない理由さぁ、この間、蓮の母親に俺たちがいちゃついてるとこ見られちゃって。」 「はっ!?」 北山は大きな声を出した。 物凄く驚き焦った顔をしている。 その顔が何だか可笑しくて笑いそうになる。 “お前が見られたんじゃないだろ” 「北山、驚きすぎ。」 「いや、普通は焦るだろ!?で、それから?」 北山は身を乗り出している。 「説教された。男同士で付き合うなって。蓮には近づくなって言われた。」 海斗は、ひどく傷ついたのを思い出し、カップに刺さっていたアイスティーのストローを無駄にグルグル?き回した。 「それで、部活に来れねぇのかな?」 「それは、ないと思う、蓮の親は俺がバスケ部だって知らないようだった。」 「じゃぁ、なんでかいな・・・」 北山は、頬杖をついた。 「蓮は親に反発してたから、それで家から出してもらえないのかもしれない。」 「あぁ、あいつの性格ならありえる。」
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