151人が本棚に入れています
本棚に追加
二人は中庭へ移動した。
中庭は、花壇があり、夏の花々が咲き誇っていた。
「これって・・・お見合いなんですかね?」
蓮は、一応確認をとってみた。
「そうよ?聞いてないの?でも今日の相手があなたで良かったわ。」
斎藤さんが蓮を見て、にこりと笑いかけながら言った。
「それは、どうも。」
「どんな強面がくるかと思ったの。でも、まぁ、あなたなら、悪くない感じかな。」
相手は年上なのでタメ口だ。
「俺は、申し訳ないけどあなたとは、お付き合いする気なんてさらっさら無いんですが。」
「あらぁ、はっきり言うのねぇ。」
斎藤は、面白そうな顔をして蓮を見つめた。
「出来れば、あなたから断っていただきたいのですが。」
「それは無理よ。」
「なんでですか?」
「あなたのお母様の経営するホテルの融資を、うちの旅館が受けることになってるの。業務提携とかいってね。」
“あのババア!先方が断れない相手を探して俺に見合いをさせたっていうのか!”
「だから、私から断りを入れるのは無理なのよ。」
「・・・。斎藤さんには・・・」
蓮は、斎藤を睨み付けながら言う。
「えっ?」
「斎藤さんには、好きな人とかいないんですか!?」
彼女は蓮の気迫に面喰った。
「・・・いるわよ。」
困った顔をさせる気はなかった・・・。けど、斎藤さんは、少し諦め顔で言った。
「いるけど、どうしようもない事だってあるじゃない?」
「・・・。」
答えは決まった。
“断れないのなら、俺がぶち壊せばいいんだよな?”
「斎藤さん、なんだか顔がテカってますよ?化粧室で直してきた方がいいんじゃない?」
斎藤は、驚いた顔をしたが、目を少しだけ細めると、
「そうね、私はしばらくお化粧室へ行って、化粧を直してくるわ。」
そう言いながら、斎藤は中庭を出てホテルに戻った。
最初のコメントを投稿しよう!