現在~冬~ Ⅳ

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~現在 冬~  大きな全面ガラスの窓の向こうのイルミネーションを見つめながら、海斗はつぶやくように淡々と話す。 「俺は、後日、蓮の事を吉川さんからすべて聞きました。 蓮と彼の父親のやりとりやら、母親のお見合いの事。 彼の弟の事もすべてです。俺の想像以上に蓮は、俺の事を想っていたんだ。 何も出来ない俺は、すごく情けないやら悔しいやら自分にとても腹が立ちました。 俺は、あいつと共に悩んだり、戦ったりしたかった。 蓮の隣で、少しでも気持ちを楽にさせてやりたかった・・・。 でも・・・変える力は何一つ無かったんです。」 館内の空気は少しずつ冷えてきているようだ。 寂しい気持ちが更に身を寒くする。 海斗は鷹野から借りマフラーにフーっと息を吹きかけた。 「蓮が、アメリカに立つ日。俺は空港であいつに言ったんです。 『最初っから“あの関係”は興味本位だけだった。だから、お前の事は、忘れてやるよ。』って。」 今でも思い出すと辛い。 でも、きっとこれで蓮は、リスタート出来る。 “俺だって、蓮、お前の事を想ってるんだ。” 「でも・・・。」 顔を伏せると涙がこぼれそうだ。 「蓮のいない生活は、思った以上に俺には辛くて・・・。バスケは特に・・うぅっ・いつも蓮を探して・・・ ・・・分かっているのに、パスが出せなくて・・っく・・」 何度も何度も行き交った二人のパス。 コートのどこにいても、蓮のいるとこは・・・わかっていたのに。 海斗は唇を噛みしめた。 その時、海斗の冷えた頭に大きな手が添えられた。 「ー・・鷹野・・さん」 困ったような優しい顔が、そこにあった。 「そして、君だけが時を止めたのかい?」 「いつから・・・起きていたんですか?」 「最初から。」 「全部・・・聞いて?」 「あぁ。」 鷹野は、優しく海斗の頭を撫でた。 「泣きたいんだろう?思いっきり泣いたらいいよ。」 そう言って、鷹野は海斗は抱き締めた。 凍えた身に鷹野の体温は、安堵感を与えた。 求めていたひと肌。 “もう、思いっきり泣いていい?” 「くっ・・・うわぁぁ」 海斗は、鷹野の胸を借りて泣いた。 「もう、大丈夫。もう、君は心のままにしていいんだ。」 鷹野は、抱き締めたまま、小さな子供をあやすように何度も繰り返した。
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