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遥か昔に生きていた虫がそのままに目の前にある。
そう思うと不思議な感覚にとらわれた。
海斗は魅せられたようにじっと見ていた。
「その虫は、君だな。」
意味がわからず、鷹野の顔を見た。
「アンバー・タイマー。琥珀が時間の記録係をしているようにみえないか?
で、一瞬の中に閉じ込められた虫は外の時間がどんなに流れようともそのままだ。
君も、彼との思い出という琥珀の中で時を止めた。」
「俺は・・・。」
海斗は琥珀の中の虫を見つめた。
「彼は新たな一歩を踏み出しているんだろう?」
“そいつに今度会うときは、その頃より、ずっといい男に成長している可能性もあるしなぁ。
まぁ、敵に塩を送るようなそんな言葉は言わないけれど。”
心の中で鷹野は思った。
「俺は、変われますか?」
鷹野はその言葉に、微笑んだ。
「もちろん。君が望むなら。」
相変わらず雪が降り北風は吹いたが、二人の心は暖かくなった。
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