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次の日。部活の後、海斗は校門に寄り掛かかる様にして立っていた。
もうすぐ来る頃だと腕時計をチラリとみると時刻は11時半を指していた。
「雪宮君。」
ピクシーこと森野可憐が1年の相楽泉と共にやって来て、海斗に声をかけた。
「やぁ。」
海斗は寄り掛かっていた門柱から、ピクシーの方へ歩み寄った。
相楽は物凄い形相で海斗のことを睨んでいる。
「ちょっと、時間あるかな?」
恐る恐る海斗が尋ねると、ピクシーはいいわよと、泉に部活のバックを渡した。
「泉、先に行って、バック降ろしてて。」
バックを受け取った泉は、途端に嬉しそうな顔をした。
「はい!わかりました!」
ピクシーのバッグを大事そうに抱え、泉は部室へと向かった。
「さっき、すっげぇ睨まれた。ピクシーの恋人ってあの子?」
海斗は泉の後姿を見送りながら問う。
すると、ピクシーは可笑しそうに笑った。
「違うわよ。あの子は可愛い後輩。さしずめ仲のいい姉妹ってところ。」
「ふぅ~ん。俺には、私の先輩を取るな!ビームで、焼き千切られそうだったけど。」
ピクシーは、はははと笑う。いつもの事なのだろう。二人は誰もいない校舎裏へと行った。
「今日はどうしたの?」
海斗は先程コンビニで買った温かい缶ココアをピクシーに投げてよこした。
「おっと、ありがとう。」
上手くキャッチしてピクシーは缶を頬に充てた。
「あったか~い。」
「あのさ、昨日、言った事、訂正させてほしいんだ。」
海斗も、自分のコーヒーを両手でコロコロ転がしている。
「え?」
ピクシーは、不思議そうな顔で海斗を見ていた。
「あ、あんまピクシーが聞いても、関係ないんだろうと思うんだけどさ。俺自身の区切りがね。」
「いいわよ。聞いてあげる。」
悪戯っぽくピクシーは笑った。
「俺さ、蓮の事、愛してたって言ったけど、過去形じゃないんだ。今でもそうなんだと思う。
でも、好きだって気持ちの他に俺はあいつに“何も出来ない自分の後ろめたさ”もあって、だから自分に足枷つけてた。
忘れてくれという蓮以外に、他を見ちゃいけないって。
でも、ずっとそのままでいられる訳なんてないんだよなぁ。蓮だってそうなんだろうし。」
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