第1章

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あなたは命について深く考えたことはありますか? 私はつい先日まで、この地球上の全ての人に人を産む権利があると思っておりました。でも、果たして本当にそうであろうかと思う事があったのでございます。 私の通っていた中学はいわゆる荒れた学校というやつで、高校に進学した者は学年の半数ほどでした。そんな荒れた中学にも根はいい人間は多くおりまして、私はとある男に恋心を抱いていました。以下、Nと名づけます。Nには既に長らく付き合っている彼女がいました。はたから見ればよくある儚い片思いでありましたが、ただ少しでも仲良くしてもらえればそれで十分と思っていた私にとっては彼女の有無などさしたる問題ではありませんでした。Nは私に優しく接してくれましたし、いつも屈託のない笑顔を見せてくれました。私は幸せでした。中学校生活など本当に短いもので仲良くなったと思ったらあっという間に卒業を迎えてしまいました。Nは私に着古した学ランの金ボタンの一つをくれたのです。 卒業してから数ヶ月、私もNもそれぞれの進学した高校で新しい生活を送っておりました。久しく会っていなかった私たちが再会したのはとあるSNSでした。昔の思い出話に花が咲き、盛り上がってきた頃でございました。 "俺、今年の3月に子供産まれる予定なんだ。" 私は冗談だと思って最初は信じませんでした。しかし、どうも本当のことであるようなのです。 私には返すべき言葉が見つからなくてしばらくの間、狼狽しておりました。こうしてSNSを媒介して突如として驚愕の事実を暴露した彼は一体どのような表情や心境だったのでございましょう。 あなたはそんなNをどう思いますか? 若気の至りで過ちを犯した愚者であると思いますか? それとも彼女を深く愛したただの一人の男であったと思いますか? それとも普通のことで何とも思わないでしょうか?
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