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「…ですから!」
ドンと机を叩く音と、年を刻んだ60代半ばの男性の声がする。
「第三部隊総勢5万人相当の我が軍を!見捨てろというのですか<軍師>(ブレイン)!」
それに答えるのは若い声。この場…軍の総司令部にて交わされる議論…に置いて、余りにも若すぎる声。おそらく20代にも言っていないだろうその人物は、こう答えた。
「そうです。マルチ中尉。あなたはポーンを守るためにビジョップやナイトを犠牲にしろと?」
「き…さまぁ!よりによって誇り高き帝国軍人を、ポーン呼ばわりだと!?」
先ほどの年老いた声、マルチ中尉は<軍師>と呼ばれた男の発言に激昂した。唾を撒き散らしながら机を何度も殴打する。
「ドンドン五月蠅いですよ。高々5万如きの兵の犠牲で我々は勝利を収めることができるのですよ?」
そうつぶやくと、若い男は傍らにおいてあるチェス盤をいじり始めた。黒のルークが白のボーンを取る。
パチリ、という音とともに、彼の手はボーンを盤外へとはじき出す。
「あなたのいう誇り高き帝国軍人。実に扱いやすかったです。国を守るため、家族を守るため、誇りを守るため。5歳児でも考えつく美辞麗句に乗せられて士気を高める愚直な<ポーン>(手駒)…これほど扱いやすい手駒があるでしょうか。お陰で最低限の犠牲でこの争いを終結させられそうだ。ほら…」
彼の手が白のビジョップの駒を手に取る。それと同時に、バン、と勢いよく司令部のドアが開く。
「伝令です!第四、第八舞台の挟撃により、敵将部隊壊滅との報告です!」
彼はゆっくりと駒を下ろしながら言葉を紡ぐ…
「チェックメイト」
敵将討ち取ったり、と
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