第一章 始動

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「ひゃあああああ!?」 ビクン、と勢いよく身体を跳ね上げる。その際に発した声で、メリッサは自らの胸が鷲掴みにされている様子を教室中に公開する羽目になる。たわわに実ったその胸が、いっそ清々しささえ感じさせるほどに勢いよく掴まれ形を変えているその光景は、16歳の青少年には少々きつすぎる光景であったことは想像に難くない。 「ちょ、ちょっとフィリー!?いきなり何をするの!?」 メリッサに怒鳴られた少女…フィリーは、無表情のままメリッサの胸を離す。 「だってメリッサ私の話聞いてくれないし…という理由を建て前に胸を揉みたかっただけ。」 「…………」 堂々と自らの欲望を口に出すフィリーに、メリッサは先ほどとはまた違う理由で机へと頭を沈めるのであった。 時刻は8時40分。クリンク戦術学院の一日の始まりを告げる鐘が鳴る。 鐘が鳴ると同時に、それまでだらけていた空気が引き締められ、誰も彼もが自らの机に、きっちりと姿勢を正して座っていく様子は、流石士官学校と言ったところか。 鐘が鳴り終わると同時、がらりと教室のドアを開け、独りの女性が入ってくる。胸に掲げられた教職員プレートには、フィオン・パーシーという名前が刻まれている。見た目は60歳頃の女性か。その身に纏う空気は厳しく、彼女が只の教師ではないことを示していた。 「委員長、挨拶を。」 「起立、礼、着席」 バッバッと、一糸乱れぬ一体感で諸々の動作を終わらせると、フィオン教官は口を開いた。 「本日より、この学院に6人の転入生がやってきます。各学年2人ずつ、AとCクラスに編入してきます。つまり、この教室にも一人転入生が入ってくる、と言うことです。」
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