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その発言を聞くと、ざわざわと周りの生徒がざわめき始める。
「静かにするように」
だが、フィオン教官の一言で、ざわついていた教室は一瞬で静かになった。
「入ってくるのはどれもあなた方、兵士を志願している生徒ではありません。指揮する側に立とうとしている人間です。ですので、この学院生活の間に、様々な実践授業を通して指揮になれておこうという目的で…」
フィオン教官が説明をしているのを聞き流しつつ、メリッサは物思いに耽っていた。
(っていうのは建前。本当は<軍師>がここに入ってくるのをカモフラージュするために執られた措置………までが、私達<隠蔽されし歯車>(ハイド・ギア)の掴んでいる状況。軍に潜り込ませている防諜隊員から得られた情報。私の猟兵団でさえここまでしか掴めてないんだから、他の<軍師>を疎ましく思っている猟兵団は、なにもつかめていないでしょうね…)
彼女の所属している猟兵団、<隠蔽されし歯車>は戦闘力もさることながら、防諜、暗殺に関しては帝国随一を誇る猟兵団である。その防諜能力をもってしてここまでの情報しか得られていないという事実に、メリッサは軽く頭痛がしていた。
(そして私に与えられた任務は<軍師>の暗殺…かぁ。気が重いなぁ…戦場で暴れている方が好きなのに)
「というわけですが……聞いていましたか?メリッサ」
突如として耳に入ってきたセリフに、メリッサは肩を震わせる。
「……いいえ、聞いていませんでした」
「まったく…夏休み明けだからといって、気を抜くことのないように」
「はい、すみません教官」
メリッサが頭をさげると、フィオン教官が、自らの入ってきたドアを一瞥する。
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