第一章 始動

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「では、本日より3年間、あなた達と共に切磋琢磨する子を紹介します。入りなさい。」 「失礼します」 少年特有の、まだあどけなさが残る声とともに、ひとりの少年が入ってきた。身長は160代後半だろうか。この茹だるような残暑の中、制服の上にフードがついた黒いパーカーを羽織っているのが印象的だった。 「では、自己紹介をお願いします」 フィオン教官に促され、少年は口を開いた。 「僕の名前はシークス・レイヤー。16歳です。好きなこと、趣味はチェスです。質問はあとで受け付けます。」 最後に付け足した一言で、我先にと質問しようとしていた生徒たちの手は、机の下に逆戻りする事となった。 その後、本日行うのは始業式だけであることシークスはメリッサとフィリーの間の席であること、30分後に体育館に集合する事を言い残し、フィオン教官は教室を去っていった。 そして当然のように行われる嵐のような質問を、すべて無難に受け止めたあと、シークスは懐の鞄からチェス盤を取り出し、打ち始めた。 (チェス盤……もしかしてコイツが<軍師>…?いや、流石に短絡的すぎるか…?) メリッサの射すような視線に気づいたのか、シークスは顔をあげるとメリッサへと言葉を放つ。 「いきなりどうしたの?食い入るような視線で僕を見つめて」
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