銀灰の護り人

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 もし生きていられたらいつかちゃんと返すから…少しでもローランにしてもらった分の小指に爪一つ分にも満たないだろうけど、それでも優しくしてもらったことは忘れないから…。  「あ……やぁ…っ」  後ろに何かが押し当てられた。  「ふ…ほら欲しがっている…ここが疼くのだろう? 」  「旦那様、焦らさずに…」  くっくっと不気味な笑い声だけが石の壁に響いている。  早く!  嫌だ!  違う!  「ロ……ラン……やだ、よぉ………」  助けて、と…まだ心の中で諦めがましくローランを探していた。  「なんだ!? 」  がちゃがちゃと騒々しい音が聞こえてくる。  お待ち下さい! こっちだ! 待てるか!  怒声と剣と色々な音が入り混じった音だ。  「衛兵! 何だ!? 」  「旦那様! 近衛隊がっ」  「何!? 」  …何…? 近衛隊…?  朦朧としているリュカの頭の中にその言葉が飛び込んできた。  もしかして…ローランが来る…?  嘘…? リュカを助けに…?  でも! でも! こんな姿……!  「やぁっ! 」  力ない声をリュカが上げるともう怒声や行き交う色々な音がすぐ傍まで近づいて来た。そして近くにいたリュカを嬲っていた私兵も慌てて動き出したがすぐに別の声が聞こえてきた。  「ド・ラ・ヴィエ侯! 」  恐ろしく低く響き渡るのはローランの声だ。間違いようがない。  やだ、やだ…こんなの見られたくない!  「くそ! 」  リュカの下肢を掴まえていた手が離れた、そしてリュカを押さえつけていた兵の手もなくなる。  頭の中が朦朧としている中はっきりとローランの声が聞こえた。  「リュカ! いるのか! 」  「ロー…ランっ…」  思わず声を上げる。力のない声、だけど何度も何度も呼んだ。  見て欲しくないのに…でも助けに来てくれた人の名を何度も…。
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