銀灰の護り人

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 ただ外で待っていても仕方がない、とアベルが町人のふりをしてうまいことド・ラ・ヴィエ侯の別荘の中に入ってから幾時が流れたのが…。  我慢出来ないと苛立つ心を外に出さぬように気をつけながらも暗闇の中で身を潜めていた。  早く…。  アベルは信用できる。腕もいい。  ここは最小限の私兵と使用人しか置いていないのかどうやら人数は少なさそうなのは勘が告げている。しかしリュカの身に今何が起っているのか…。  ド・ラ・ヴィエ侯が怪しげな薬に手を出しているのは噂で掴んでいたが王妹を嫁せられた方で証拠がつかめないとどうにも動けない厄介な方だった。  下手に証拠が出なければかえって失脚させる機を逃し、言い逃れをして逃げられる可能性だって少なくないのだ。  だが、今はそれどころではない。  「ローラン! いた! 早く! 」  アベルの鋭い声に反応したのは早かった。  突入の号令も出さずに我先にローランは駆け出した。  「どこだ!? 」  「地下だ! 人は少ない! 」  短時間でアベルは的確に探ってくれたらしい。  地下へと続く階段をすでにアベルは探していてそのアベルの案内で下りてくと甘い香りが風に乗って流れてくる。  「この香…」  ローランのすぐ後ろを追ってきたヴァレリーと顔を合わせて頷いた。  間違いない、これで堂々と詰め寄ることが出来そうだ。  だが今はそれよりもリュカだ。この香を使う時…意識を混濁させて…まさかリュカの身にも…!  気が急いてしまう。  ヴァレリーの顔にも焦りが見える。きっと自分も冷静とは程遠い顔になっているに違いない。  「リュカ! 」  一際香の強く感じ、その匂いを辿っていけば地下牢の中に寝台の置かれた部屋があった。  「衛兵! 何をしている! 」  ド・ラ・ヴィエ侯の声。  「リュカ! 」  ド・ラヴィエ侯の声の先、目に入った光景に戦慄した。  裸に剥かれたリュカの細い体は開かれ、手足を枷と鎖につながれ、その細い体の間にド・ラ・ヴィエ候がだらしない姿でそこにいた。
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