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「ロ…らぁ……ン…」
リュカの覚束ない口調。
ローランは急ぎ外套を脱ぎながらリュカの寝せられている寝台に近づき、ド・ラ・ヴィエ侯をなぎ倒した。そしてそっとリュカの体を包んでいるその間にすでに近衛兵は指示がなくともその場にいた者を捕縛していた。
よくぞ殺さずにいられた…とローランは自分を褒めたい位だ。
「リュカ…私だ…分かるか…? 」
決して弱音も泣きもしなかったリュカの顔が涙で濡れていた。それに口の端にはこびりついた精液。
リュカの目の焦点がどこか虚ろで体をすっぽりと外套で隠してから声をかけた。
「み…ないで……汚い…」
「そんな事はない! 安心しろ…もう大丈夫だ…」
小さく必死に頭を振るリュカをぎゅっと抱きしめる。
「ローラン様」
あっという間に捕縛を完了したヴァレリーが鍵を差し出してきてそれでリュカの手足の枷を外してやるがリュカは体がいう事をきかないらしく動きが緩慢だ。
「連行しろ! 」
縄につながれたド・ラ・ヴィエ侯らを鋭く一瞥し、殺していいものならここで殺してやるのに、という目で睨みを利かせる。
「リュカ…帰るぞ…」
「ローラ…ん…マノン……いる…助けて」
「分かっている。大丈夫だ」
「…おこ…らない…で? ……悪いの…僕だか、ら……」
こんな時にまで人の事を気にして…。
わなわなと怒りで手が震える。
リュカの手足の枷をかけられていた手首足首が痛々しく擦り剥けている。抵抗したのだろう。
「痛くないか…? 」
その手首の擦れた血の滲む傷をそっと擦るとリュカがびくびくと体を震わせた。
「平気……平気…」
まるで自分に言い聞かせるようにリュカが呟いている。
「……このまま抱き上げるぞ」
そっと自分の外套にすっぽりとリュカを包んで抱き上げた。
「んんっ…」
「どこか痛むか!? 」
リュカが体を捩ろうとする。
「ちが…」
小さくリュカがローランの腕の中で頭を横に振った。
そのままゆっくりと地下を上がっていくとアベルが濡らした布を差し出してきてそれでリュカの汚れた顔を拭いてやる。
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