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「ごめ…なさい…」
さっきよりも幾分目に力が戻ってきてほっとする。
「ローラン様」
こそりとヴァレリーが耳打ちして来た。
リュカに聞こえないように本当に小さな声だ。
「練り香を使われているんじゃ? 」
「……」
ローランは頷いた。
ちょっとした振動でもリュカの体がびくびくと反応し、その度にリュカが恥かしそうに困った様に泣きそうに顔を俯ける。
「…近くに宿を取る。リュカの着替えを頼んでもいいか? 」
アベルが頷いた。
「ヴァレリー、後の事は頼む」
「分かりました。着替えは後でアベルに運ばせます。ローラン様はリュカを」
「ヴァレリー…アベル…ジスラン…」
傍にいた見知った顔にリュカがほっとした声を絞り出している。
「いいから。おとなしくしてな」
アベルがリュカの顔を覗きこんで言うとリュカが泣きそうだ。
「ローランに思い切り甘えていいからな? 」
「当然だ」
この役目は自分のものだ。他の誰にも渡すわけにはいかない。
「ど、して…宿…? 」
「…黙っていなさい」
なんでわざわざ? と思いながらもローランの出現に安心してしまってどうにも朦朧としている頭の考えが散漫してしまう。
体が火照ってむず痒い。奥が…自分で弄るなら弄りたい位だ。
このまま馬とか馬車で、ローランの屋敷まで帰ると言われたならきっと気が狂いそうになるかもしれない。
ローランはアベルやヴァレリーとなにやら耳打ちしてリュカをそのまま抱いた状態でド・ラ・ヴィエ侯の別荘を出て行こうとした。
「ロー…ラン……マノン、は? 」
声が掠れてしまう。
「大丈夫だ。何もされていないで部屋に閉じ込められていたらしく馬車で屋敷に帰す」
よかった、とそこはほっとした。
痛ましそうなローランの目がじっとリュカを見ていてリュカは耐えられずにローランから目を逸らした。
「ごめ…な、さい…」
「……謝らなくともいい…」
ローランがぎゅっと外套に包んでくれているリュカの体を抱きしめてくれた。
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