銀灰の護り人

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 「体が辛いだろうが少しだけ我慢してくれ。リュカ、首に腕を回せるか、馬に乗る…」  「う、ん…」  暗い外に近衛兵の人が馬をお持ちしました、とローランに声をかけていた。  そっと手をローランが包んでくれた外套から出してローランの首に回すとローランは器用に片手でリュカの体を抱いたまますぐに馬上の人となった。  体が辛いだろうが…って…リュカの体の状態の事をローランは知っている…? それとも枷とかされてたからその所為って事…?  どうなんだろう…?  でも…あんな所…見られたくなかった…。  でも…助けに来てくれた。  「ごめ……さい…」  「リュカ…いいから」  リュカを横抱きにしたままローランは馬を出した。  二、三人の近衛兵もついてきて、近くの宿にすぐ決めるとその兵達は帰って行った。  「この辺りは貴族の別荘地も多いしいい宿もそれなりにあるから助かった」  ローランはリュカをずっと抱いたままでそのまま部屋に連れて行かれた。  「主人、湯の準備は」  「へぇ。してありますのでそのままどうぞ」  案内してくれた宿の主人にローランが声をかけている。  「分かった。ではあとは水と酒の用意だけをしておいてくれ。多めに。その後は明日の朝まで用はない」  「畏まりました」  部屋に入ってすぐにローランは怒った様な口調でそう言い放ち、そして宿屋の主人が下がるとリュカを抱いたまま湯場に向かった。  「あ、の…」  「ちょっと待ちなさい」  リュカを外套に包んだまま広い脱衣場に置かれていた椅子に座らせ、すらりとローランが自分の着ていた衣類を脱いでいく。  …どういうこと? 一緒にお風呂入るの…?  「や…だ、め…! 」  そんな事されたら…欲しいと言ってしまう! だって今もこのはしたない身体は疼いて欲して仕方ないのに!  「……俺では嫌だ、という事か? 誰がいいんだ? アベルか? 」  「な、に…言って……? 」  「だがそんなの許さない」  ローランがリュカを嗜めるような目で睨んだ。  「許さない」  何が…?  でも、だって…。  ローランの目がリュカの事を熱く見ていた。  薄い灰色の目が、いつもは冷酷そうに見える目が炎を纏っているような目で…。
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