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「王陛下にお会いできてよかったって…伝えてもらえる? 」
「ああ、分かった」
ローランが仄かに口角を上げて頷いた。
全部ローランのおかげでこうしてリュカは生きていられるのだ。
受け入れてもらえて生かされている。これからはローランの為に生きたい。助けてくれたお礼なんて出来ない位だけど、ローランが少しでも笑っていてくれればいい。ずっと苦しそうだったローランの表情が穏やかになっていてくれればそれでいいと思う。
リュカはベッドの中からローランを見送りそして幸せそうな笑みを浮べた。
そうしてリュカは正式にローラン・ド・ラ・クール伯爵の養い子となった。
学習も屋敷ではライナルトに教えられ、王宮にも通うようになった。
馬にも一人で乗れるようになったのはローランがおとなしくて言う事をよく聞く葦毛の牝馬をリュカに贈ったという事もおおいに関係しているとは思う。
もう少ししたら学舎にも通うことになる。
一緒に勉強を見てもらっている王子はリュカよりも年は一つ下だったけれど、どうやら同じ学年にしてくれるらしい。
知り合いもいないしそれはとても助かる。
助かるのだが…王宮に通うリュカの姿は勿論他の人の目にも入るわけで、しめやかに噂は流れたらしい。
ド・ラ・クール伯の養い子は元王子。
なんといってもその目の色が証拠のようなものだ。
そしてローランの元婚約者が前王との間に子を成していたのも忘れ去られた記憶から呼び戻した貴族もいたらしい。
だが、王室ではリュカを王子と認定はしていないし、表向きはド・ラ・クール伯の養子だ。あくまで。
王宮とは不思議な所でそういった公認の事項も黙殺されるような所があってリュカは不思議で仕方がないがローランは相変わらず気にしないらしいので、リュカも気にしないようにした。
第二王子も青い目でリュカはすぐに仲良くなった。リュカは確認した事はなかったが、王子の方も本当は従兄弟にあたると認識しているようで、育った環境が下流なのにも関わらずリュカを卑下するようなところもなかった。かえって農村がどういう所かなど色々話を聞きたがった位だ。
王陛下はそんな二人の所によく顔を出し、そういう時は気さくにリュカにも声をかけた。
人目がある時はあくまで、ローランの養い子に対して位の接し方だったが、人目がなければそこには親愛が溢れていた。
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