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「一つ思い出した事があるのだよ」
ある日ローランと一緒にリュカも王陛下から呼び出しがかかり、王の私室に向かうとそう切り出された。
「リュドヴィカの異母兄弟が一人生きているかもしれない」
「え!? 」
リュカはローランと顔を合わせた。
「ただ王子と認定はされていないんだ。兄上が認めなかったからね…。その子は金の髪に緑色の瞳だった。いつも王宮の奥でひっそりとしていた子だったけど…16年前に王宮から出された。ちょうどイン国から当時の皇太子が我が国に訪問されていて、イン国では黒髪黒目が普通だから…所望すると言われて兄上はその子を差し出したんだよ…」
「え!? 」
リュカは顔を顰めた。
「歌の上手な子で宴で歌を披露して気に入られたらしいのだが…当時10歳位だったか…今は25、6歳位になっているはず。イン国でも皇位即位があったりして今はあまり行き来をしていないが…何度か書簡でやり取りしたが…消息は私も分からない。思い出したので一応リュドヴィカには教えておこうと思ってな…。教えたからといってどうにもなる事はないのだが…すでに年月も経っていて生きているのかどうかさえも分かってはいない。アストゥールの王族にも名は綴られていないしな…」
王陛下も困惑顔だった。
リュドヴィカの名は一応は系図に載っていた。すでに鬼籍に入っている事になっているが…。
「そうなんだ…僕の、お兄様…になる…? 」
「生きていれば。イン国の皇王は気難しいご気性らしいから…どうなっているか私にも計りかねるが…。数年前までは確かに生存はしていたらしい。すまないね…不確かな情報で。イン国の皇王がどうも皇位を受けてから段々と性格に難が出てきたらしく、今はあまり国交がないのだ。それにイン国は北のウルファとの国境で小競り合いを繰り返しているらしく、忙しいというのもあるようだが…」
「そうなんですか…」
もし会う事ができるのならば会ってみたい気もするけれど…。
きっとその人も父である前王によって運命を翻弄された人なのだろう。
リュカは自分の運命と重ね合わせてしまう。
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