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それでもリュカはこうしてローランがいつでも隣にいてくれるので幸せだ。その人は幸せを感じた事はあるのだろうか…? と人の事ながら思ってしまう。
「異国の事だし心に留めておくだけでいい。ただ思い出しただけなんだ」
「…はい」
複雑そうな表情を浮べる王陛下にリュカは小さく頷いた。
「ねぇ…王陛下から聞いた人…生きているのかな…? 」
「さぁな」
夜のローランの寝室でリュカはうつ伏せになりながら気になる事を口に出した。
王陛下から話を聞いてからずっと気になっている。
「随分気にしているな? 」
「…うん。だって…幸せなのかなぁ…って思って。僕が今幸せだからそう思うんだろうけど…」
「…いい事だ」
ローランの腕が伸びてきてリュカの体を掴まえるとリュカの項に口付けてきた。
「くすぐったいっ」
もう毎日夜はローランのベッドがリュカの寝床になっていた。
ローランが仕事で出仕する時は起きてからローランがリュカをリュカの寝室のベッドに運ぶ。ローランが休みの時は一緒に起きるまで甘い時間を過ごすのが普通になっていた。
「…アベルとジスランがもうそろそろ出て行くそうだ」
「ええ!? 」
突然のローランの言葉にリュカが起き上がった。
「元々二人にはリュカの身辺警護を任せるために来てもらったからな。リュカの身辺も落ち着いたしそろそろいいだろうと言ってた」
「…そうなんだ…」
ずっと採掘場からリュカを守ってくれた人達だ。
ある意味兄のような存在でもあったのに…。
「その二人にイン国を勧めてやろう」
「……え? 」
「国境の小競り合いはもう随分と長いのだが最近激しくなってきているという話も聞く。最近は特にきな臭いという話だ…傭兵の二人にはもってこいの話だと思わないか? そのついでに調べ物も頼めばいい」
「…ローラン! 」
リュカが声を弾ませてローランに抱きつくとローランもしっかり受け止めてくれる。
「だが…あまりいい方には考えるな。イン皇王の噂は聞くがとても褒められたような人物ではないようだから…どんな扱いをされているのか…」
「…そうなの…? …悲しいね…前王にも認められなくて…売られたようなもので…それなのに行った先の国でも…って…」
「ああ、そうだな…」
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