銀灰の護り人

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 「お世話になりました」  ぺこんとリュカは金色の頭を下げた。  「でも…どんな所かも分からないのに…」  幼馴染のドニの小母さんが顔を顰めて心配そうにリュカを見ていた。  「そうだよ! 考え直せって!」  ドニもリュカの肩を掴んで揺さぶる。  でも、決めたんだ、とリュカは静かに首を横に振ると金色の髪がさらさらと音を立てた。  「リュカ兄ちゃん…どこか行っちゃうの?」  ドニの幼い妹や弟達もリュカを心配そうに見ていた。  「うん。元気でな? 僕もちゃんと働いてお金を稼いだらきっと恩返しにくるから」  「リュカ…そんな事はいいから…いいんだよ…」  ドニの小母さんが止めてくれるけど、ドニの家だって食べていくのがやっとなんだ。余裕があるわけでもないのにいつまでも厄介になってちゃいけない。  優しい人達だ。自分達だって苦しいのに自分なんかの面倒を見てくれて…いつまでも甘んじてちゃいけない。  「大丈夫! 体は小さいけどいっぱい働けるから。集合の時間に遅れるから行くね! 今までありがとう。いつか…きっと恩返しに来るから…」  涙が出そうになる。  「リュカ…」  ドニもドニの小母さんも小さい妹弟も目を潤ませている。  泣いてる暇なんてリュカにはないんだ。  くっとリュカは顔を上げ、そしてドニの家族に笑顔を見せた。  「行ってくるね! 」  「リュカ…元気でね」  「いつか絶対…ちゃんと帰ってこいよ」  ドニの家に背を向け、小さな荷物一つでリュカは世話になったドニの家を出た。  道の途中、ほんの三月前まで暮らしていた家の焼け跡に立ち寄った。  焼け果てた見るも無残な家の残骸は未だにそのままになっている。見るのもまだ辛いくらいだが…今度いつここに来られるか分からないから…。今度があるかさえも分からないのだ。  「父さん…母さん…」  三月前、一夜にしてリュカの運命は先の見えない暗いものに変わってしまった。  「…行ってくるね…」  小さく焼け跡に向かってリュカは呟いた。  アストゥール王国の王都から遠く離れた貧しい農村。農業でほとんどの住民は暮らしている。どこの家も裕福とはかけ離れていた。
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