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まだドニの弟妹達は小さいのに…。
だからリュカは決めたんだ。
「行って来るね! 」
どうせリュカにはもう待ってくれる人なんていないのだから…。
育った家の残骸からくるりと背を向け、リュカは町の方に向う道を歩き出した。
ボロのチュニック。靴は穴が開きそうになっている。
それでも着る物はこれしかないんだ。この辺りの子供は皆同じような格好だ。
両親がいた頃はそれでもまだよかったけど…。亡くした事を羨んでも仕方のない事。
リュカは顔は俯けまい、と前を見据えて町を目指した。
町までは歩いて一刻位だろうか…。
ドニのお父さんの用事で前に来た時に鉱石の発掘場で働く労働人を募集しているのを知った。
仕事がきついという事は聞いて知っていた。
でもこのままドニの家に世話になったままではいられない。
まだ15歳。けれどもう15歳だ。
貧しい家ではもう立派な労働力になる。
でも何の紹介も知り合いもいないリュカに町で仕事を探すのは難しい事だった。
しかも住む家もないのだ…。
住み込みで何か仕事をと探してもあるのは用心棒など。剣技などリュカは知る由もないし、まして体も小さいのにそれはどうしたって無理がある。
学もない。
何もリュカは持っていないのだ。金も家も親も全部。
両親は人付き合いもなかった。村の近所だけの付き合いのみ。
でも父さんは一月半に一度もう一つ先の大きな街まで必ず出かけていた。そこに行けば誰か知り合いがいるのだろうか?
でもそれもリュカは何も知らないのだ。
町に、大きな街にも行ってみたいとねだった事もあったけれど、決して両親はあの村からリュカを出さなかった。
そして何か事情があるんだ、と悟ったリュカは町に行きたいと口に出さなくなった。
でもその両親もいなくなってしまい今はもうどうしようもない。
一人で生きていかなくてはならなくなったのだ。
町の広場に大きな幌付きの馬車が止まっていて見るからに生活に疲れたような人達が何人か乗っていた。
リュカもそこに乗る事になる。
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