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――刃凱学園のとある一室。
アンティーク調の扉はかたく閉ざされ、部屋の中央にある小さなランプだけがその部屋の唯一の光源となっていた。
部屋には六人の人影がある。
会話するでもなくそれぞれが思い思いに過ごしている。
と、ソファーに腰掛けていた一人が口を開く。
「今日が始業式ってことはつまり…、“特別枠”が入学してくるってことだよなあ?」
朱の入った目尻を楽しそうに和らげて、少年は言った。
その言葉に、隣に座っていたもう一人が金の瞳を輝かせながら頷く。
「おう。一体どんなやつだろうな。」
「……まあ、うるさくなければそれでいいよ。」
壁際で腕を組んで立っていたミルクティー色の髪の少年が呟く。トマトジュースの入ったグラスを、不服そうな顔で口元に運んでいる。
「……俺は興味ない。」
「えー?“人間”の後輩ができるなんて嬉しいけどな。」
チェス盤を挟んで向かい合っていたうちの一人、アルビノと見まがうような少年が言うと、もう一人がブロンドの髪を揺らして首を傾げる。
――自然と、五人の視線は唯一“特別枠”について言及していない少年のもとへと集まった。
窓際で退屈そうに寝転んでいた彼は、視線に気づいて上体を起こす。
そして、ゆっくりと紅い唇をゆがませた。
「――おまえ等がどう思ってるかは知らねーが、“特別枠”は俺のおもちゃだからな。……手、出すなよ?」
飛び出した台詞に、部屋の空気が凍り付く。
“特別枠”に興味があるからではない。
この、様々な混血(ハーフ)が集まる刃凱学園において、何かを所有するには、多くの牽制、権力、犠牲がつきまとう。
学園のすべてが『取り合い』なのだ。
その証拠に、彼の言葉を了承する者は誰もいなかった。
――…学園に嵐がやってくる予兆のように、ランプの中の炎が風もないのにゆらゆらと不安定に揺れていた。
“特別枠”との対面まで残り、2時間。
prologue*end
to be continue…
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