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「やめろ」って言えたらいいのに、僕は言えなかった。
樋口はすぐに瞼を閉じた。
僕を視界から消した。
――お前なんかに興味ない――
フロントガラスに背中を向けて、思いっきり遠回りをして家に帰った。
「やけに遅かったじゃない」と言う母親に、言い返す気力はなかった。
……あの男、誰だよ。
樋口に訊きたい。
訊きたいけど、これを訊くっていうことは、僕は樋口を好きだってことになるのか?
気になるだけ。
もやもやするだけ。
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