1、森高くんの話

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「やめろ」って言えたらいいのに、僕は言えなかった。  樋口はすぐに瞼を閉じた。  僕を視界から消した。  ――お前なんかに興味ない――  フロントガラスに背中を向けて、思いっきり遠回りをして家に帰った。 「やけに遅かったじゃない」と言う母親に、言い返す気力はなかった。  ……あの男、誰だよ。  樋口に訊きたい。  訊きたいけど、これを訊くっていうことは、僕は樋口を好きだってことになるのか?  気になるだけ。  もやもやするだけ。
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