2、樋口さんの話

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 キスしているとき、なんとなく瞼を開けたくなる。  目の前のこの人は、いったいどんな顔でキスをしているんだろうって気になるから。  瞼を開けて見えたのは、大きな鼻。  それがなぜか気持ち悪く見えて、思わず視線をフロントガラスの向こうに動かした。  黒いパーカーを着た、森高くんが立っていた。  クラスメイトだ。  驚いたようにこっちを見ている。  私は瞼を閉じた。 「クラスメイトが見ているから止めて」  と言ったとしても、この男は止めないだろう。
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