第1話 彼が会社を辞めたい理由

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…………もう、限界だった。 「ふざけんなよッ!!」 辞表と書かれた白封筒をくしゃりと握り締める比呂斗(ヒロト)の細く長い指。 力を込めすぎて白くなった甲に血管が浮き出ている。 「なんだ、これ」 拳を机に叩きつけ、俺を見上げるその鋭い視線。 …………それも、これが最後。 「…………申し訳ございません」 できるだけ感情を込めないようにして、俺はそれだけ告げる。 …………ごめんな、お前にそんな顔させて。 「何が不満だ」 「いえ、何も」 「じゃあッ、なんでッ……!!」 肩を震わせて俯く比呂斗。
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