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「コーヒーでも淹れましょうか」
「いや、俺はこのまま事業部長のところに行ってくるから……」
「わかりました。社長には、少ししてからお持ちしますね」
「悪いな、いつも……」
比呂斗と俺が声を荒げるのはままあることで、八木にしたらいい迷惑だろう。
社長室はある程度の防音が効いているとはいえ、あれだけ声を荒げれば隣の部屋だ、少なくとも怒鳴っていることは分かるに違いない。
「大丈夫です。社長にはチョコレートも付けときますから」
おどけたように小さな菓子を持って笑う八木は、大した女だと思う。
「頼む」
俺は小さく頭を下げて、足早に事業部に向かった。
急なアメリカ出張から帰国して1週間。
八木という優秀な秘書が日本にいたお蔭で、仕事は滞りない。
とはいえ、3週間も不在にしていたのは事実で、大きな問題はないものの、日々瑣事に追われるまま時間だけが過ぎてしまっていた。
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