156人が本棚に入れています
本棚に追加
俺が忙しければ比呂斗も同じ。
二人で忙しなく仕事をしているだけの日々。
今までなら余計なことを考えずに済む、ましてや比呂斗と一緒にいられると喜んでいたはずなのに…………。
「…………ハアッ」
誰もいない廊下で大きな溜め息をつきながら、それでも足を止めずに歩き続ける。
苛立っているのは分かっていた。
さっきだって、あそこまで言い合うことなんてなかったのに…………。
そんな自分にまた苛立ちが募って、とうとう俺は足を止めてしまった。
エレベーターホールを行き過ぎ、突き当たりの窓辺に背中を打ちつける。
眼鏡を外して、皺の寄った眉間を揉み解した。
…………こんな顔じゃ、比呂斗だって余計な話をしたくないに決まってる。
むしろ俺が避けているように思っているかもしれない。
…………本当は、そうじゃないのに。
最初のコメントを投稿しよう!