第2話 彼が会社を辞めない理由

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俺が忙しければ比呂斗も同じ。 二人で忙しなく仕事をしているだけの日々。 今までなら余計なことを考えずに済む、ましてや比呂斗と一緒にいられると喜んでいたはずなのに…………。 「…………ハアッ」 誰もいない廊下で大きな溜め息をつきながら、それでも足を止めずに歩き続ける。 苛立っているのは分かっていた。 さっきだって、あそこまで言い合うことなんてなかったのに…………。 そんな自分にまた苛立ちが募って、とうとう俺は足を止めてしまった。 エレベーターホールを行き過ぎ、突き当たりの窓辺に背中を打ちつける。 眼鏡を外して、皺の寄った眉間を揉み解した。 …………こんな顔じゃ、比呂斗だって余計な話をしたくないに決まってる。 むしろ俺が避けているように思っているかもしれない。 …………本当は、そうじゃないのに。
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