第2話 彼が会社を辞めない理由

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「アッ…………」 俺のデスクはすっかりそのまま、社長室の中にあつらえられていた。 ドアの近く、比呂斗のデスクとは90度の角度に据え置かれている。 「そこに移した」 「どうしてッ…………」 役員フロアは共有の廊下、受付スペースから入り、その奥には役員ごとに秘書室と執務室が設けられている。 俺は八木と並んで、社長秘書室を使っていたのに。 「毎日何度もお前を呼ぶのは面倒だ。八木ちゃんにも迷惑だろうしな」 「そんな…………」 確かに俺は一日のうちに何回も比呂斗に呼ばれる。 時に重たいドアを不機嫌そうに開け、時に内線で。 俺が席を外していればその応対をするのは八木だし、大体一々重たいドアが大仰に開くだけでも軽いストレスだろう。 それは分からないでもないが。
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