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「じゃあ、私そろそろ戻りますね」
話を切り上げようと、お盆を持ち上げた時、ちょっと待って、と引き止められた。
宮内さんは胸ポケットからボールペンを出すと、私のすぐ横に屈む。
「ちょ、なに書いてるんですかっ」
「動いたらこぼれるで」
そう言われて、うっと動きを止める。
私が動いたせいで、大きく波打ったコーヒーは少しこぼれていた。
書き終えた宮内さんは、姿勢を戻して不敵な笑みを浮かべる。
「理沙ちゃん、真田さんにはなくても、俺にはちょっと興味あるやろ?」
「……なんですか、その自意識過剰発言は」
「これ、プライベート用の番号やから。休みでも夜中でも朝一でも、いつでもかけてきて」
「じゃあ、待ってるわ」そう付け加えると、宮内さんはコーヒーを顔の高さに挙げて、私の返事も聞かずに給湯室をでていく。
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