half moon

6/20
前へ
/37ページ
次へ
「女の子がそんな大きいため息ついたらアカンやろ」  台に両手を付いて下げていた頭に、そんな声が落ちてきた。  誰か見なくてもわかる関西弁に、振り返らずに返事をする。 「宮内さん、お疲れさまです」 「お疲れさん。 なんや冴えへん顔してどうしたん? かわいい顔が台無しやで」 「はぁ、どーも」 「まぁ、そんなアンニュイな顔も、そそるっちゃそそるけど」 「はぁ、どーも」 「なんよ、その返し。調子狂うわ」  苦笑した宮内さんは、隣の棚に腕を組んでもたれる。 「どうしたん? なんか嫌なことでもあったん? 仕事?」 「いえ、仕事のことじゃないんですけど……」  コーヒーメーカーの隣に置いていた携帯を見る。宮内さんがその視線を追った。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

212人が本棚に入れています
本棚に追加