134人が本棚に入れています
本棚に追加
同じ列に座る子供たちは、今にも飛び出しそうなくらい前のめりになる。
「真田さん、大技くるみたいですよ!」
ついウキウキしてしまって、真田さんの腕を軽く何度か叩く。
真田さんも楽しみなのか、目をキラキラさせていて自然に頬が緩む。
トレーナーさんが手を高く上げて、ピーっと高い笛の音が空に響く。
近くにいるイルカが柔軟な体をしならせて、今日一番の高さでジャンプする。
「あ」
急に、真田さんが間の抜けた声を出した。
イルカへの意識はそのままに、真田さんに「なんですか?」と視線だけ向けようとした。
「だから、ここ--」
真田さんがそう言いかけたのが早かったか、それとも衝撃が襲った方が早かったか。
一瞬、なにが起きたのかわからなかった。
すぐ目の前を、雫がポタポタと通過していく。
最初のコメントを投稿しよう!