17/24
前へ
/24ページ
次へ
 同じ列に座る子供たちは、今にも飛び出しそうなくらい前のめりになる。 「真田さん、大技くるみたいですよ!」  ついウキウキしてしまって、真田さんの腕を軽く何度か叩く。  真田さんも楽しみなのか、目をキラキラさせていて自然に頬が緩む。  トレーナーさんが手を高く上げて、ピーっと高い笛の音が空に響く。  近くにいるイルカが柔軟な体をしならせて、今日一番の高さでジャンプする。 「あ」  急に、真田さんが間の抜けた声を出した。  イルカへの意識はそのままに、真田さんに「なんですか?」と視線だけ向けようとした。   「だから、ここ--」  真田さんがそう言いかけたのが早かったか、それとも衝撃が襲った方が早かったか。  一瞬、なにが起きたのかわからなかった。  すぐ目の前を、雫がポタポタと通過していく。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

134人が本棚に入れています
本棚に追加