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 真田さんの方を向いたまま固まっていたから、真田さんは私のすぐ目の前にいて。  真田さんは頭から水を被ったみたいに、びしょ濡れになっていた。 「……空いてたんだね」  前髪からたくさんの雫を滴せながら、眉を下げた笑顔で言う。  強く冷たい風が吹き抜けて、濡れた体を急激に冷やす。  ぶるっと震えたと思ったら、くしゃみが出た。 「あー、そこのお兄さん達濡れちゃいましたねー! 前の売店でメイリーちゃんのタオル売ってますので、良かったらどうぞー!」  トレーナーさんの商売上手な冗談に、会場に笑いが溢れる。  隣の子供たちは、よく見ればカッパを着ていて、「大丈夫?」と心配そうな顔で首を傾げている。
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