134人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
真田さんに対して感じた不思議な感覚が、ずっとがんじがらめになっていた気持ちを解けさせた。
彼に対して疑問を持つと同時に生まれた、今すぐ動かないと消えてしまいそうなほどの、微かな決心。
それを揺らされるカタチに、出鼻を挫かれた状況になっているのに、正直なところ、とてもほっとしていた。
この期に及んで、まだ私は真実を知る覚悟が出来ていない。
自分の過去を知る覚悟が。
土曜日の水族館は、家族連れとカップルで溢れていて、四方八方から楽しそうな声が飛び交っている。
場違いな思いを抱えている私を、その楽しそうな空気が包む。
居心地の悪さを感じながらも、今日は、今日だけは、全て忘れて楽しんでもいいんじゃないかって。楽しみたい、と思った。
もしかしたら、もう二度とこんなことはないのかもしれないから。
最初のコメントを投稿しよう!