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真田さんがリビングの奥へと向かう。
カーテンが開けられて、部屋に淡い光が差し込んだ。
明るくなったリビングを見て、懐かしい、そんな気持ちがようやく出てきた。
テレビ、ソファー、テーブル。
カウンターキッチンに、ダイニングテーブル。
見慣れた家具達が、記憶そのままに並んでいる。
壁には私と理奈ちゃんが昔描いた絵が飾ってあって、柱には二人分の身長を教えるキズがあった。
そのキズにそっと触れた。
ここで生活していた。家族4人で。
今は私一人で、ひとりぼっちになってしまったけど、それでも4人で過ごした思い出がここには溢れている。
辛くて悲しい思い出も多いけど、幸せで温かくなれる思い出の方がもっとたくさんある。
それなのに、全然帰ってこなくて、毛嫌いしちゃって、ごめんね。
そう思ったら、部屋の空気が柔らかくなった気がした。
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