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真田さんは、ふっと笑みをこぼす。
それは、まるで自分を嘲(あざ)笑っているようだった。
私が忘れてしまっていたこと。
私が思い出したかったこと。
私が全てを放棄したあとに、この家で起こったこと。
それは、とても、どうしようもなく悲しいだけの、残酷な物語だった。
一体、誰を責めるべきなんだろう。
一体、誰が責められるというんだろう。
少なくとも、私には、彼を責めることも、理奈ちゃんを責めることも出来ない。
ただ、どうしようもない悲しみだけが、心を覆い尽くす。
「次の日、理奈から電話あって驚いたよ。……君が何も覚えてないって。
手紙を見付けたのは、君だったよね?」
それに、小さく頷いた。
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