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ねえ、真田さん。
私には、それが全部嘘だったなんて思えない。
今、私の前でこんな表情を向けるあなたが、本当のあなただなんて思えない。
「他に聞きたいことはない?」
彼を見つめたまま、首を横に振った。
「……じゃあ、そろそろ終わりにしようか」
真田さんはそう言って、私に近付いた。
すぐ目の前に来ると、足を止める。
「水野さん、ミステリー好きだったよね。じゃあ、ちょっと考えてみて」
腕を前で組んだ真田さんは、私を真っ直ぐに見つめる。
「俺は殺人犯で、君は唯一の関係者で目撃者。証拠も握ってる。
そして、ここは住宅街から離れた屋敷。ここにいるのは君と俺、二人だけ。誰もここに俺たちがいることを知らない。
ミステリーの定式思い出してみなよ。今からなにが起こるのか、今君はなにをすべきなのか」
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