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「私が……っ、私がここに連れて来なかったら……何も思い出さなかったらっ!
思い出したいなんて思わなかったら……っ」
「そんな風に言わないで。
……俺ね、今ほっとしてるんだ」
柔らかい声が落ちてくる。
まるで本当に安心しているみたいな声に、もっと胸が苦しくなる。
「ずっと、ずっと誰にも言えなかったから。
自分でも驚いてるけど、こんな穏やかな気持ちは本当に久しぶりなんだ」
そんな声で、私を納得させようとなんて、しないで。
納得なんか出来ない。
納得なんかしたくない。
だって、もう終わったことじゃない。
もう十年も前の話じゃない。
今更全てを暴いたところで、誰一人、幸せになんてならないじゃない。
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