263人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「だから、水野さん。俺のことは、忘れて」
そんなの無理に決まってるじゃない。
どうやったって、無理だよ。
こんなにも、こんなにもあなたでいっぱいなのに。
「じゃあ、そろそろ離してくれる? そんなにぎゅってしてくれて嬉しいんだけど、もう行かなきゃ」
「嫌……、やだ……っ」
嫌だ。絶対、嫌だ。
だって、この手を離したら、あなたはいなくなってしまう。
私のそばから、いなくなってしまう。
「こっち向いて」
抱擁が緩く解かれる。
私を見つめる真田さんは、とても、とても優しい顔。
そんな顔してるから、もっと涙が止まらなくなる。
最初のコメントを投稿しよう!