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連発でアクビをした為、山神の右目の隅に、涙が見えたのが
ちょっとおかしかった前野は
「ハイ、なんでしょう」
と笑いをこらえた。
「まず、お花と線香を買って、そのあとお墓ね」
「え!墓ですか」
「うん。羅地カセ子のな」
「判りました」
前野は笑顔で大きく返事した。
高台で見晴らしの良い墓地に着くと、
一番奥のカセ子の墓まで行き、
二人は手を合わせ、拝んだ。
山神は墓石を見ながら
今までの詳細を報告し
(線子のことは心配せんでエエから。
あんじょう、成仏してや)
と呟いた。
隣の草むらでは、この時季に出始める、
クビキリギスが1匹、ジーっと、うるさいくらいの高い音で鳴いていた。
完
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