秋の野の ししにくくはむ 百姓ら

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<季題> 秋の野 <季節> 収穫の秋 この句は、中句の句切り換えにより二通りの読みを成す。即ち、 しし肉食はむ しし憎く食む 秋: この語のみで季題を成すものではない、とする。 の: 属格の格助詞。上句の双方について。 野: 自然(生態系)の直喩。人為の直喩たる「里(人里)」に対置。 上句「秋の野」が季題ではあるが、詠まれる季節が「収穫の秋」であるため、転じて里の田畑を示唆すると解釈すべし。 しし肉: 猪肉、または鹿肉。秋のジビエ(狩猟の獲物としての鳥獣、またはその肉)の代表格。 昨今、国や地域を問わず山野の生態系の破壊が進み、生育域変更と食糧確保を余儀なくされた鳥獣による農業被害が多発している。そのため、また食物連鎖上位の捕食者の激減・絶滅等も受け、積極的害獣駆除の必要性も増大した。 日本では、猟友会会員の減少や法制度の不備、更に解体・精肉技能修得者の決定的な不足もあり供給流通量は停滞気味とはいえ、それでも結果的に「しし肉」の旬は事実上冬以外の全期に及んだ。果たしてこれを喜ぶべきか、はたまた哀しむべきか。 食はむ: または、喰はむ。「食ふ(喰ふ)」の未然形と、推量・未来・意志の助動詞「む」の連体形による。この句では「食べるだろう(推量)」乃至「食べるだろう(単純未来)」の意。 「む」を終止形と見做す解釈も可。
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