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木手と密着した体をよじり、腕の中で僅かに距離を置いて振り返ると、あまりの近さに息が止まる。慌てて再び前を向くと、小さく笑われたような気がした。
「とりあえずベッド行って…」
「うん?」
「さっき替えたシーツが、また駄目になるようなことします」
替える必要なかったですね、という声が耳をくすぐる。とぼけた声を返してみたものの、かかった息は熱く耳の中が蕩けそうだった。
ベッドに目をやれば、先ほど暴れてしわが寄っていたシーツはぴんと張っていて、もちろん自分が濡らした染みもない。
恥ずかしいものが消えていて少しほっとしたけれど、そもそも友人の家でシーツを替えなければならないような流れになるのは今更ながらおかしいだろ、と保っている理性が秋本自身に問いかける。
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