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「あの……本当に、すみません……俺……」 「いいですよ。気にしないでください」 「で、でも……」 秋本 直は、混乱していた。 握るのか開くのか、はっきりしない不自然な格好をした手は胸元に上げたまま行き場をなくし、カタカタと微かに震えていた。 目の前にしゃがみ込む男は秋本の方を見ること無く、足元に散らばった絵の具のチューブを淡々と拾っては鞄に投げ込む。その様子を眺めつつも、自分が今何をすべきなのかが分からなかった。 「(……ど、どうしよう…)」 心も頭も、罪悪感と焦燥感でいっぱいで。しかし、視線の先の男は秋本に対して何の感情も見せる気配はなく、それが余計に頭を混乱させる。 「て、手伝います……」 「……。どうも」 かろうじて聞こえた、味気のない返事。けれどそれは、落ち着き払った、優しい声だった。
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