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「…同じ?」
聞き返すと、身長も…もちろん座高も秋本を上回る木手が、目線を合わせるように背筋を曲げて顔をのぞき込んでくる。
いきなり迫ってきた整った顔に、思わずカップを手放しそうになった。
「(…ち、近いな……!)」
男、と分かっていても緊張する。体が固まる。この綺麗な黒目に見つめられると誰でもこうなるだろう、と秋本は自分に言い聞かせた。
ふっ、と笑うその顔に、心臓がドクン、と跳ねる。
「同じです。なんでかな、寝てる秋本さんの顔を見たら…俺も昨夜は、ぐっすり眠れました」
いつもの倍は眠れましたよ、と木手は刺のない笑顔を向けてくる。
至近距離で、予想外の表情でそんなことを言われ。この男は散々冷めきった態度を見せておきながら、なんてことを口走っているんだと思った。
「……な、何言ってんの、」
「秋本さんと同じことですよ」
「お、俺は……木手くんの顔を見たらとか、言ってないよ……」
「あ、朝食どうしますか。夕べ秋本さんお腹すいてたのに結局何も食べずに寝たでしょ」
「……木手くんは、たまに俺の話を無視するよね」
「それとも風呂入りますか?」
「……」
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