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秋本は午後から、木手は2限からの授業で運良く2人とも1限の授業がなく、一緒に朝食をとることにした。
とはいっても、見るからに使われていない木手の自宅のキッチンに当然まともな食料や調味料は無かったので、近所のファストフード店に入った。財布が寂しい秋本でも購入できるものが、ここにはたくさんあるのだ。
誰かと朝食をとるのも、こんなしっかりとした物をこんな時間に食べるのも久しぶりだ、と普段の乱れた食生活を振り返りながら、OLやサラリーマンが殆どを占める店内のカウンター席に木手と肩を並べて座る。
昨日までは、腹が減った時に、コンビニのパンや安い弁当を決まっていない時間に食べていた。それが深夜であることも珍しくはなかった。
「(……人間に戻った気がする)」
そんなことを思いながら、野菜の食感がみずみずしいサンドイッチを口に含み、慌ただしく通り過ぎる人の波を眺めた。
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