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「(……引きこもってる間に社交的になったのかな、俺)」 そんなありもしない事を考えてしまうくらいに。 当然そんなはずはなく、現に久しぶりにまともに外に出て登校した日は、すれ違う人が皆敵のような気がして気が気じゃなかった。教務部の人や講師と話す時も、目を合わせた記憶がない。 それに引き換え木手の目は、今はっきりと思い出せるくらいしっかりと見ていたのだから、不思議である。 “ほぼ初対面”という感じが、まるでしなかったのだ。 「(……無愛想だけど…結構笑ってたな…)」 頭に優しく笑う木手が浮かび、思わず鼻の下まで水中にうずめた。 『秋本さん』 別れ際、背を向けた自分を呼び止めた木手の声が、耳に染み付いている。 『趣味が無いのなら、俺と会ってください』 『え?』 『……昨日、秋本さん寝ちゃったから殆ど絵も描けて無いですし。会う理由はそれでいいでしょ』 今は、と最後に付け足して、木手は小さく頭を下げたあと大学の方向へと小さくなっていった。 その時、なぜか暫くその場に立ち尽くしてしまったのだ。木手の背中が小さく、小さくなる程度に。 会う理由、と木手は言ったが、秋本はその言葉に違和感を感じずにはいられなかった。 ――理由が無ければ、会わないのか。 そんなことを思ってしまう。
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