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「(……また、だ…)」 昨日みたいに、生理現象のように溢れてくる涙の対処法を、秋本は知らない。 突然声や姿を思い出し、突然涙が溢れ出す。まるで自分の中にもう一人、関係ない他人が住み着いて自分を操っているように思えるほど、それは唐突で勝手だった。 「……シロ…シロ…」 濡れた体が少しずつ冷え、全身を覆うタオルを握ったまま、頭に浮かんだ男の愛称をとり憑かれたように繰り返す。 突然、迷子になった子供のように、感情も言動も不安定になる自分への対処法が分からない。 昨日は木手がずっと背中をさすってくれた。秋本よりも広い肩幅が冷たい空気を遮ってくれていたからか、周りが少し暖かかった。 なのに今は一人で、寒くて、訳がわからなくて。とりあえず服をきよう、と必死に脚に「立ち上がれ」と暗示をかける。 その時、部屋から聞きなれた音楽が流れた。
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