第1章 だめだめイケメン

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魔女の育久みのり、本名マイル ヘクタヤードの計画を、明太達が阻止してから、3ヶ月が経過している。 育久 みのりは、この3ヶ月で、魔術で損害を与えた人達に謝罪をして回り、私財を放出して損害賠償を行い、心理的、肉体的なケアを行った。 つい先日、それらを一通り終了し、 育久産婦人科外科は、それまで右腕として働いてきた男に任せ、彼女は身を引いた。 そして、明太の父である仙治と結婚した。 今は、名前を元のマイルに戻し、三黒 舞琉と日本名にして、専業主婦となっている。 今、2人は新婚旅行に出ている。 欧州を回る旅で、マイルの出身地であるスペインに立ち寄る計画で、ぶらっと出発した。 明太と春も、付き合い出して3ヶ月が経過した。 もう11月になり、クリスマスに自分達で稼いだカネで、クリスマスプレゼントを買うという目標のもと、2人はアルバイトを始めていた。 そして今日、明太はクビになったところだ。 三黒家に春は、ちょくちょく来ている。 最初に食事を作りに来たり、泊まり込んだりして以来、抵抗が無くなったようだ。 何より、抵抗を取り払ったのは、付き合っているという事実である。 交際したいという仁義を切らないと交際が始まらないのは、日本人特有の感覚かもしれない。 自然に付き合いが進むというのは、まれなことらしい。 仙治達のいない三黒家に春は、今日も来ていた。 春は、明太と大して広くはない対面型のキッチンに立ち、晩飯を作りながら、会話の切れたときに、昼間のことをきいた。 「で、支店長は、なんですって?」 明太は、戸棚から皿を出しながら、きたか、と、思う。ごまかすことに意味はない。 「クビになった。」 春は、包丁を使う手を止めた。 「クビ…ですか。 ま、考えてもしょうがないでしょう。 ミスをしたのは事実だし。」 明太は、胸をえぐられた気がした。
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